JDへの道 No.87 夏休み 14 就職活動 04 |
水曜日の午後3時頃。
これから飛行機に乗って、ニューヨークからシアトルに戻ります。フライトまでまだ時間があるので、ニューヨークでの出来事を振り返ってみようと思います。昨日、火曜日の朝7時半の便で僕はシアトルからニューヨークへ向かいました。旅の目的はニューヨークのマンハッタンにオフィスを構える法律事務所での最終面接です。これを通過すれば、来年の夏のインターンの内定をもらえます。
面接当日の今朝、僕は7時過ぎに起きました。昨夜はホテルの分厚すぎる枕が原因で寝付くのに時間がかかりましたが、わりかしさっぱりと目が覚めました。熱めのシャワーをゆっくり浴びて体を起こしたあと、背広に着替えました。ネクタイを2本持ってきていたので、どちらを締めるか迷ったのですが、日本人なんだから、日本のブランドのネクタイで勝負しようと思い、Takeo Kikuchiのネクタイを選びました。これは叔母の旦那から譲ってもらったもので、光沢のない黄金色をネクタイです。
午前9時過ぎにホテルをチェックアウトし、背広の上にノースフェイス(The North Face)のバックパックを背負い、ブリーフケースを片手に面接先の法律事務所へ向けて歩き出しました。緊張してホテルを出たものの、ざわつくニューヨークの朝が心を落ち着かせてくれました。車のクラクションや遠くから聞こえてくるパトカーのサイレンが街を賑にぎわせ、清々しい朝の風がホテルの入り口の上に掲げられた星条旗を揺らめかしていました。
横断歩道を渡ろうと赤信号を待っていると、目の前にいる女性の乾き切っていない髪から甘い香りが漂い、道ですれ違った男性からは柑橘系の香水の香りがしました。ブブカを着た女性やユダヤ教の衣装で歩く男性を見て、改めてニューヨークが国際都市であることを認識しました。黄色のタクシーと黒塗りのリムジンが行き交う道路の横を、僕は何度も腕時計の時間を確認しながら事務所へ向かいました。
聳え立つ高層ビルや行き交う人々に目をやりながら歩いていると、あっと間に事務所が入っているビルに着きました。集合時間の15分前に1階のロビーで受付を済ませ、セキュリティー・ゲートを通り抜けると、2階の会議室に案内されました。緊張しながら大きな黒革の椅子に腰掛けていると、人事部のスタッフが部屋に入ってきて面接官の略歴と一日の予定表を渡してくれました。僕の面接官は4人でした。10時から12時までの間に、それぞれと30分ずつ面接をすることになっていました。
彼女が面接の流れを説明して部屋を出て行くと、入れ替わりに2年目の弁護士が笑顔で僕のファースト・ネームを呼びながら部屋に入ってきました。彼は最初の面接官のオフィスまで僕を案内し、全ての面接が終わったあと、昼食に連れて行ってくれました。
4人の弁護士との面接は順調に進みました。少なくとも、僕はそう感じました。会話が弾み、事務所に興味を持った理由もしっかり伝えることができました。米国の法律事務所での面接で必ずと聞かれる、日本人の僕が米国のロースクールでJDを取得しよう理由についてもうまく説明することができました。
あとは結果を待つのみです。面接が始まる前に人事部のスタッフから受けた説明によると、面接の結果は遅くとも来週中に教えてもらうことができるようです。1泊2日のニューヨークへの旅は慌しかったですが、確かな手応えとともに終えることができました。